夏目漱石全集(8) <収録作品は『こころ』など> (販売店:楽天ブックス)  小説

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■目次
こころ/道草


■青空文庫から『こころ』を一部抜粋
 私の仮定ははたして誤らなかった。けれども私はただ恋の半面だけを想像に描(えが)き得たに過ぎなかった。先生は美しい恋愛の裏に、恐ろしい悲劇を持っていた。そうしてその悲劇のどんなに先生にとって見惨(みじめ)なものであるかは相手の奥さんにまるで知れていなかった。奥さんは今でもそれを知らずにいる。先生はそれを奥さんに隠して死んだ。先生は奥さんの幸福を破壊する前に、まず自分の生命を破壊してしまった。
 私は今この悲劇について何事も語らない。その悲劇のためにむしろ生れ出たともいえる二人の恋愛については、先刻(さっき)いった通りであった。二人とも私にはほとんど何も話してくれなかった。奥さんは慎みのために、先生はまたそれ以上の深い理由のために。


■『こころ』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。

<『微笑』などを収録> 芥川龍之介全集(第13巻) [ 芥川龍之介 ](販売店:楽天ブックス)  小説

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■目次
隣の笛/我机/「ふゆくさ」読後/病状雑記/微笑/「笑ひきれぬ話」の序/「私」小説論小見/侏儒の言葉/「未翁南甫句集」の序/「支那游記」自序〔ほか〕


■青空文庫から『微笑』を一部抜粋
 僕が大学を卒業した年の夏、久米正雄(くめまさを)と一緒(いつしよ)に上総(かづさ)の一(いち)ノ宮(みや)の海岸に遊びに行つた。それは遊びに行つたといつても、本を読んだり、原稿を書いたりしてゐたには違ひないが、まあ一日の大部分は海にはひつたり、散歩したりして暮してゐた。
 或暮方(くれがた)、僕等は一(いち)ノ宮(みや)の町へ散歩に行き、もう人の顔も見えない頃、ぶらぶら宿の方へ帰つて来た。道は宿へ辿(たど)り着くためには、弘法麦(こうぼふむぎ)や防風(ばうふう)の生えた砂山を一つ越えなければならぬ。


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